いくら

前項でお話した筋子はどちらかと言うとマイナーで、中には知らない人もいたかもしれませんが、いくらになると恐らく知らない人はいないと思われます。筋子のところでもお話しましたが、いくらとは筋子をばらばらにしたものであって、本質的には筋子といくらは同じ鮭の卵です。筋子の用途がある程度限られているのに対し、いくらはしょうゆ漬けやいくら丼など応用範囲が広く、様々な形で日本人に食されています。

いくらは日本語ではない?

鮭の卵を食する方法としては、日本では筋子を塩漬けにしたりしょうゆ漬けにしたりしており、いくらのようにばらした形で食する方法は存在していませんでした。大正時代に入り、ロシアとの交流が盛んになる時期にロシアからいくらという新しい形の鮭の卵の食し方が渡ってきて、このときから日本でもいくらが食されるようになったのです。
いくらという言葉は元々ロシア語で、しかも鮭の卵に限らず、魚の卵を全ていくらと呼んでいます。現に、日本でも有名なキャビアもいくらという言葉が使われています(いくらは赤いいくら、キャビアは黒いいくら)。従って、語源から考えるといくらという呼び方は正確には正しくはないのですが、日本ではこの時にいくらと呼ばれたことから、鮭の卵をばらしたもの=いくらという形で定着していったものと思われます。

ロシアでのいくらの食され方

では、いくらの本家本元であるロシアではいくらはどのように食されているのでしょうか。ロシアでは、いくらはほとんどが塩漬けにした缶詰という形で販売されているようです。そして、それをパンの上にのせてサワークリームと一緒にして食べる方法が有名なようですね。そう言えば、キャビアなんかもそのようにして食べられているのをテレビなどでよく見かけますが、ロシアではこのようにして魚の卵を食べるのがポピュラーなんでしょうね。パンといくらという組み合わせは日本人にはほとんど馴染みがないですが。いくらの塩漬けは日本でも昔から行われており、ある意味いくらの加工方法としては一般的ですが、味の方はというと少し淡白なようで、日本人の味覚には合わないらしく、そのためもあってか日本ではいくらは味が濃厚なしょうゆ漬けのほうが好まれています。

いくらに向いている鮭の卵

いくらは筋子をばらしたものですから、筋子をばらせるくらいの皮の厚さがなければばらしている最中にいくらが破れてしまいます。しかし、余り硬すぎると今度は逆に食感が悪くなってしまいます。従って、いくらに向いているのは、筋子ほど皮が柔らかくなく、食感が悪くならないほど硬くない程度のものになります。具体的には、産卵を控えた鮭が川を遡る少し前のものが一番よいとされています。この時期の鮭の卵がいくらに加工するのに一番向いていると言えます。

いくらの作り方

いくらとして使うものであっても、鮭の身から取り出した時点ではまだ筋子と同様に筋でつながっていますから、筋子から筋をとっていくらにしてあげなければなりません。お店に行くと、既にいくらに加工されたものが販売されていますから、普通の人はわざわざ自分で筋子をばらして加工することはしないかもしれませんが、多少なりともこだわっている人は自分で生筋子を買ってきて、そこからいくらを作っています。具体的な手順は次の通りです。

  1. 40度程度に暖めた水を用意する(若干塩を入れてもよい)
  2. 用意した湯の中に生筋子を入れ、破かないように気をつけながらゆっくりとばらす
  3. ばらしたいくらをしばらく水に漬けてかすを落とす、これを数回繰り返す

以上の方法で生筋子をばらしていくらにすることができます。いくらにばらす時に使うお湯は、固めのいくらの方が好きな人は塩を入れない方が歯ごたえが出ます。また、魚網のような穴の開いたものを使うとばらしやすくなるようなので、もしお持ちであれば使ってみるのもいいでしょう。生筋子は皮が柔らかいですから、いくらを破いてしまわないように注意しましょう。

いくらの食材への利用方法

いくらは筋子と違ってばらばらになっていて非常に使いやすいため、様々な方法で食材利用されています。いくらのしょうゆ漬けにしたり、それをそのままご飯の上にのせていくら丼にしたり、すし飯の上にのせてすしのネタとして利用したりするのは恐らく誰もが知っている方法でしょうし、実際にその方法でいくらを食べる人が多いでしょう。他にも、鮭フレークといくらを一緒にご飯の上にのせて鮭の親子丼として楽しんだり、パスタの上にのせていくらスパゲティとして食したりと、そのレシピのバリエーションは豊富です。いくらそのままでおつまみのようにして食べるもよし、ご飯のおかずとして食するもよしというものですから、日本人がいくら好きになるのもわかろうというものです。

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